演奏会〔5〕プッチーニの世界『ある晴れた日に』本番

音楽祭のフィナーレは、歌劇『蝶々夫人』のコンサート形式(字幕付)でお届けする、演奏会〔5〕「プッチーニの世界『ある晴れた日に』」を、写真とカーテンコールの動画で振り返ります。※リハーサルの様子はこちら


開場中に、徳永二男音楽監督と広上淳一さん(指揮)とのプレトークが行われました。今回の音楽祭を軽く振り返ったあと、話題は、これから上演する『蝶々夫人』に!

広上さんは、音楽祭Tシャツを着てくれています。

「 約2時間半、ほぼ歌いっぱなしというプリマドンナ・中村恵理さんの歌声を楽しんでほしい」と、広上さんが話すと、「宮崎国際音楽祭管弦楽団の音はよく鳴るので、背中を押されるような音圧があるんですが、それにも負けない素晴らしい歌声を聴かせてくれます。ああいう声でヴァイオリンが弾けたらいいなと思う」と、徳永音楽監督も中村さんをはじめソリストの歌声を絶賛。また、「合唱団の皆さんも、出番は少ないけれど、素晴らしい歌声を披露してくれます」と、県合唱連盟で構成された合唱団にも触れて話されました。


熱い期待で埋め尽くされた満員御礼の客席。いよいよ開演です。

【第一幕】

<あらすじ>
アメリカ海軍士官ピンカートンは領事のシャープレス相手に契約結婚をすることになったと語る。そこへ15歳の芸者、蝶々さんが芸者仲間とともにやってくる。結婚の誓約が終わったとき、伯父ボンゾが現れ蝶々さんをなじる。悲しむ蝶々さんをピンカートンが慰め、二人は愛の二重唱を歌う。


客席の横から歌いながら入ってきた蝶々さん。皆さん最初どこから声が聴こえているんだろうと、客席から舞台に上がる蝶々さんに驚かれたのではないでしょうか。コンサート形式でしたが、サプライズ的な登場に、お客様も喜んでいただけたと思います。しかも、第一幕は、白無垢をあしらった衣装! 中村さんがこの公演のためにオーダーメイドしたもので、お客様も食い入るように見ていらっしゃいました。

宮崎管弦楽団音楽祭の音を、フェスティバル・オーケストラとしては、世界の5本の指に入ると話していた広上さん。オーケストラも、繊細且つダイナミックな響きで、情感豊かに歌います。

中村恵理さんと福井敬さんによる「愛の二重唱」で、第一幕が終わります。

【第2幕】

<あらすじ>
第1幕の3年後。ピンカートンは帰国したまま戻らない。女中のスズキは蝶々さんのために祈る。蝶々さんは夫の帰りを信じて「ある晴れた日に」を歌う。シャープレスが訪ねて来て、アメリカでの結婚を告げるピンカートンの手紙を読みかけるが、胸が痛んで先を読むことができない。すると、周旋人ゴローが金持ちヤマドリ公を連れてくる。蝶々さんはヤマドリの求婚を拒絶し、二人を追い返す。そしてシャープレスに子どもをみせる。港に礼砲が鳴り、アメリカ軍艦が入港してきた。蝶々さんは狂喜して部屋に花びらを撒き、障子の穴から港をのぞいて一夜を明かす。

第2幕・3幕は、艶やかなオレンジ色の着物の衣装で登場した中村さん。衣裳でも魅了してくれました。

第2幕には、蝶々さんが女中スズキに「あの人は帰ってくる、私は信じてるわ」と歌うアリア「ある晴れた日に」や、スズキと蝶々夫人で歌う「花の二重唱」など、有名な聴きどころも。

ピンカートンの帰りを待つ一夜。夕闇が、やがて闇夜になっていく場面で、宮崎国際音楽祭合唱団が、切なく、もの悲しい「ハミング・コーラス」を歌い上げます。第2幕が終わると、合唱団と2階のバルコニー席で演奏していた、ヴィオラの安藤裕子さんにも、大きな拍手が送られました。

【第3幕】

<あらすじ>
朝が来た。スズキが蝶々さんを休ませたところへ、ピンカートンとシャープレスが現れ、子どもを渡すよう蝶々さんを説得して欲しいとスズキに頼む。ピンカートンは「さらば、愛の家よ」を歌って駆け去る。蝶々さんが走り出てくると、夫の姿はなく、見知らぬアメリカ人女性がいた。すべてを悟った蝶々さんは、30分後に来て欲しいと女性を去らせ、子どもを抱きしめて「かわいい坊や」を歌い上げたのち、父の形見の短刀を喉に突き立てる。

第3幕では、ピンカートンが自らがした行いを悔やむ場面で歌われる有名なアリア「さらば愛の家よ」を、福井さんが叙情的に歌い上げます。


そして、いよいよラスト。

自害する直前に歌う、蝶々夫人の壮絶なアリア「かわいい坊や」。

心揺さぶる中村さんの歌声と迫真の表情が、蝶々さんの想いと重なり、会場の涙を誘いました。

約3時間(休憩含む)にわたる素晴らしい演奏に、客席からは惜しみない拍手が贈られます。

いつまでもいつまでも鳴りやまない拍手の中、出演者の皆さんは、晴れやかな表情を浮かべていらっしゃいました。

↓↓↓終演後に、記念撮影!

(左から)甲斐英次郎(バリトン/シャープレス)、福井敬(テノール/ピンカートン)、中村恵理(ソプラノ/蝶々夫人)、山下牧子(メゾソプラノ/スズキ)、竹内直紀(テノール/ゴロー)、中原ちふみ(ソプラノ/ケイト、蝶々夫人の母)、砂場拓哉(バリトン/ボンゾ)、晴雅彦(バリトン/ヤマドリ、役人)

〇お客様インタビュー

終演後、宮崎大学6年生の浜辺早織さんと、楠志保さんに感想をお聞きしました。

浜辺さんは長崎出身、楠さんは神戸出身で、大学進学とともに宮崎に来られたそうです。

「今年度で大学を卒業するので、宮崎の思い出になればと思って」と初来場の理由を話すのは、浜辺さん。「蝶々夫人の舞台が出身地の長崎なので、グラバー園とか長崎港に入ってくる船などを想像しながら楽しみました。広い会場いっぱいに歌声が響いてすごいですね。衣裳も綺麗で素敵でしたし、身振り手振りもあって、表情も豊かで素晴らしいなと思いました」と中村恵理さんの歌声に、感動された様子でした。

楠さんも音楽祭は初来場。「ストーリー自体は、映画を見ていたので知っていましたが、生演奏は迫力がありますね。オーケストラに負けない声量に驚きました。感動しました」とのこと。

お二人とも、存分に『蝶々夫人』の世界を堪能していただけたようでした。


〇お客様アンケートから一部紹介します。

「ソロの方々の声量、表現力、合唱がうまく重なり合って、素晴らしい「蝶々夫人」でした。涙が出ました。」((60代女性)

「期待していた以上に素晴らしい演奏でした。合唱団の出番は余りありませんでしたが、美しいハーモニーがソリストをより引き立たせていました。特に第2幕のハミングは、心地よい響きで胸に沁みました」(70代以上女性)

「中村さんの身体から泉のように流れ出る発声、お見事でした。」(50代女性)

「初のオペラでした。とても素晴らしく感動しました。母の日で、宝物のプレゼントをいただいたようでした」(50代女性)

4月28日(土)から開催してきた「第23回宮崎国際音楽祭」も、おかげさまで大盛況のうちに閉幕。

御来場、御支援いただいた皆様、キャストの皆様、本当にありがとうございました。

また来年、この場所でお会いしましょう。


〇【動画】カーテンコールの様子をお楽しみください。

『ぷれぽ』

「プレビュー」&「レポート」 Text:文章、Photo:写真、Movie:動画で、宮崎国際音楽祭の魅力をお届けします。